俳句の殿堂

萬翠荘 ホームに戻る俳句の殿堂TOP~俳句の殿堂~ 麦

(ムギ)

結社理念

麦冊子
中島斌雄の詩精神を継承し、新しい俳句の創造をめざす。

主宰者

麦主宰 橋爪鶴麿
橋爪 鶴麿(ハシヅメ ツルマロ)
昭和2年東京生まれ。
昭和21年慶応義塾大学俳句研究会入会。同年「麦」創刊に参加。以来、中島斌雄に師事。先生没後の「麦」の会の現在会長。

【句集】
『ゴンドラの月』『橋爪鶴麿句集』『冬欅』

連絡先

「麦」発行所
〒215-0004 川崎市麻生区万福寺4-21-12 吉田 功 方

主宰の100句

1 ヨット出て湖の真中の旗となる
2 死者に手紙春の落日音もなし
3 雪嶺や額の烙印消すすべなし
4 冬の月のぼる静かに行方賭ける
5 暑き夜やひそみて重き海の音
6 万緑や病みてかなしき力瘤
7 泉に童乳すうときの口をして
8 久しく書かざりし誇の一字鳥帰る
9 枯木澪なしゴンドラの月渡すなり
10 骨壺のぬくみ死してはじめて抱きし父
11 浅蜊父の目大地に落ちてわれを見つむ
12 寒三日月空の片耳耳すます
13 枯野を行く雲の番地は訪ねがたく
14 なげやりなつつじの落花職に就す
15 いちよう散る怺えがたきかどっと散る
16 冬田に子一人あまりしごとく遊ぶ
17 反戦歌花から花へと歩む
18 仏と胸をあわす寒灯やや黄ばみ
19 雨がつなぐ天地菜の花明りして
20 五月の寒き一日川に背を向けて
21 パリ黄落無聊の十指ささくれて
22 花杏信濃にうすき揉み上げ剃る
23 姨捨に花の盛りの水を呑む
24 駅舎に鳴くこおろぎ二人子の未来
25 老鶯や雲が余りし雨こぼす
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26 三日月も暈は円型弥生来る
27 日向の木日かげる木夏は禱りの木
28 空に撒いて貝かがやかすわが晩夏
29 足ばやにひとすぎゆけり原爆忌
30 塔を仰ぎ花咲く塔を胸に建てる
31 ひまわりを赤く塗っては慟哭す
32 月光の猫となりては踊りたし
33 花がゆれれば広島が揺れ重い約束
34 月の出や蹤き来し犬がつと並ぶ
35 日めくりの日がずれて花散りにけり
36 花を見て見捨てて灯下銀の匙
37 干戈を捨ててよりの歳月霞む海
38 国定教科書の桜が咲いて重い靴
39 赤尾敏の消えし空間若葉雨
40 夾竹桃火事場に似たる腕まくり
41 冬暖か万のだるまの白目なる
42 辛夷の花いつもうしろに声がする
43 数珠玉や乳母車から足が出る
44 池めぐり来てまた触れる冬欅
45 助走のごとくなれど花散る下で止む
46 初夢の崖縁をただ歩むかな
47 甘酸っぱい落葉の嵩や画家の家
48 著莪の花日暮れは鳥の真似をする
49 星になるまであじさいの蔭にいる
50 風が出て芒となんとなく笑う
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51 万歳は悲しき言葉鳥雲に
52 桜から微熱をもらう志野茶碗
53 いつも異端に身を置く牡丹崩れては
54 神様にもある好き嫌い紅葉山
55 たたみ込む落花傘では黒が好き
56 餌をやるは驕りにちかし春の鴨
57 あるわけはない不死の国桃の花
58 めぐり来るその日灼けたる壁たたく
59 欄干は凭れるものや秋の蟬
60 陽は雲の中に落ちゆきかき氷
61 葡萄棚出てもしばらく猫背なる
62 墓石に置く手を雨が打ち夏半ば
63 ぼんやりとしていて鴨がいなくなる
64 崖の道紅梅はいま仰ぐ位置
65 紙屑のたまる日曜春の雪
66 樹下に整す冠もなし梅匂う
67 月へゆく船組立てる朧かな
68 梅雨曇川を見ていて水となる
69 降る雪の劇的ならず竹箒
70 花は死を近づけ少しきらびやか
71 渋柿に渋満ちている遠山脈
72 耳すます花咲く前の花の声
73 星空や木の実の寝息ききにゆく
74 声に出さぬ祷りの言葉石蕗の花
75 死後ありたき形を思う春の山
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76 気負いなく生きて桜の盛りかな
77 凌霄花遺言一行目から悩む
78 向日葵を播く突然の太鼓鳴る
79 道なりに行くしかなくて大夏野
80 秋夕焼声をあげねば亡ぶかな
81 明け易し白磁の壺に青い翳
82 芒原残照を吸い尽したる
83 死を軽しと言いし日ありぬ冬欅
84 秋の山傷のごとくに道のあり
85 いちよう散る中に道化として坐る
86 秋の雨台本にない鳥が来る
87 彼岸まで鴨ゆきつくを見て帰る
88 地獄にても花の宴を張らんとす
89 翼欲し有無を言わさぬ春である
90 この先はと問うきりもなく降る雪に
91 荢殼焚く煙の先の荒野かな
92 雲は秋遠くばかりを見てしまう
93 肉締るごとく落葉の了りし木
94 漂泊の靴音を聞く夜の霧
95 春が来る戸を叩くでもなくて
96 カンナ燃えいつも淋しい空の隅
97 人の死に慣れしや騒ぐ樟若葉
98 なにげない生き方であり大根干す
99 亡びという甘さを秘めて花菖蒲
100 救いはいつも神の手の内霜柱

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